EUでビジネスを行うなら押さえておきたい!VAT番号の必要性と取得のポイント

EU(欧州連合)でビジネスを行う際に欠かせないのがVAT(Value Added Tax)です。
日本の消費税のような間接税ですが、EUでは国境を越えて物やサービスが流通するため、VATの扱いも各国のルールが複雑に絡み合っています。

今回は、EU域内でビジネスを展開する企業や個人事業主の方に向けて、VAT番号が必要となるケースや取得方法、その後の申告・納付の流れなど、押さえておくべきポイントをわかりやすくまとめました。

1. VAT番号とは?

VAT(Value Added Tax)は、EU各国で導入されている付加価値税のことで、消費税に近い仕組みです。

  • VAT番号は、EUでビジネスを行う事業者に割り当てられる識別番号
  • VATの申告や納付の際に必要となり、請求書にも記載が求められます

2. VAT番号が必要になるケース

VAT番号の取得が必須となるかは、ビジネス形態や規模、取引相手の国などによって異なります。主なケースは以下のとおりです。

  1. EU加盟国に拠点を置いてビジネスを行う場合
    EU内で法人や支店、倉庫を設立して販売・サービス提供を行うなら、拠点所在国の税務当局でVAT番号を取得し、売上や仕入れにかかるVATを申告・納付する必要があります。
  2. ECサイトなどを通じてEU加盟国向けに商品・サービスを販売する場合(越境EC)
    EU向けの売上高が一定額を超える(現行ではEU全体で年間10,000ユーロ超など)と、EUでの申告・納付義務が発生します。2021年7月以降はOSS(One Stop Shop)IOSS(Import One Stop Shop)といった簡素化制度を利用できます。
  3. EU内の企業にサービスを提供する場合(B2B取引)
    原則はリバースチャージ制度が適用されるケースもありますが、業種や国によって異なります。B2B取引先からVAT番号の提示を求められることも多いので、念のため自社でもVAT番号を取得する場合があります。
  4. EU内企業同士で商品の移動がある場合
    例えばフランスからドイツへ商品を移すなど、EU内で物理的に在庫を保管・移動する場合は、該当国でのVAT登録が必要となる可能性があります。

3. VAT番号取得の流れ

実際にどこで、どのようにVAT番号を取るかは以下の要素で変わります。

  • 事業を行う国(拠点の有無)
  • 取引形態(物販/サービス、B2B/B2C)
  • 年間売上高

3.1 事業を行う国・拠点を決める

  • 現地法人・支店を設立する場合
    設立国で商業登記を行い、その後税務当局にVAT登録を申請します。処理期間は数日〜数週間と国によって異なります。
  • 越境EC(EU内に拠点なし)の場合
    ビジネスを行う国や顧客の所在地、出荷拠点などを踏まえて、どの国でVAT登録が必要か判断します。
    EU向け取引全般を一括管理する「OSS」を利用できれば、1カ国で登録を行い他国分もまとめて申告可能です。ただし、EU外企業の場合は税務代理人(Fiscal Representative)の選定が必要な国もあるため注意してください。

3.2 必要書類を準備して申請

多くの国で共通して求められる主な書類・情報は以下のとおりです。

  • 会社登記に関する書類(登記簿謄本や定款など)
  • 代表者や取締役の身分証明(パスポートなど)
  • 事業内容を示す資料(事業計画、ウェブサイト情報、契約書など)
  • EU内拠点がある場合はオフィスの賃貸契約書など
  • EU外企業の場合は税務代理人との委任状

3.3 VAT番号の発行

税務当局の審査後、VAT番号が付与されます。発行されると「VIES(VAT Information Exchange System)」というシステムで番号の有効性を確認できるようになり、請求書の発行やVAT申告などに使います。

4. VATの申告・納付

VAT番号を取得した後は、定期的に納税の義務が生じます。

  1. 売上や仕入れのVAT集計
    請求書にはVAT番号やVAT額を明記し、仕入れにかかるVATは控除対象となるため正確に帳簿を管理します。
  2. 定期申告
    国によって月次、四半期、年次など申告頻度が異なります。
    OSSを利用している場合は、OSSポータルで一括申告が可能です。
  3. 納付
    申告内容に基づき差額を納付します。期限に遅れると延滞利息や罰金が発生する場合もあります。

5. 注意点

  • 国ごとの規定差
    EU域内ではVATの基本ルールは共通していますが、詳細な登録条件や申告・納付の頻度、罰則などは各国で異なります。専門家への相談が安心です。
  • EU外企業は税務代理人が必要な場合がある
    日本などEU外企業がVAT登録する際に、Fiscal Representative(税務代理人)を立てる必要がある国もあります(国により不要な場合もあり)。
  • VIESでの番号確認
    取引先のVAT番号も含め、必ずVIESで有効性をチェックしておくとトラブル回避につながります。
  • OSS/IOSS制度の活用
    OSS:EU内の越境B2C取引(物販・サービス)を一括申告する制度
    IOSS:EU外からEUに商品を輸入・販売する際の簡素化制度
    上手く使えば、各国への個別登録や複雑な手続きをある程度省けます。

まとめ

EUでビジネスを行う場合、VAT番号の取得はほぼ必須といえます。
ビジネス形態(物販・サービス、B2B・B2C)や売上高、EU内の拠点有無によってVAT登録の要・不要や義務が異なるため、早めに確認を行うことが重要です。
取得後は国や制度(OSS/IOSSなど)に沿って定期的な申告・納付を行いましょう。
言語の問題や書類準備のハードルも高いため、専門家やコンサルタントのサポートを受けるとスムーズです。

免責事項:
この記事の内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、税法や関連規制の解釈は国や時期により変わる場合があります。
実際の手続きにあたっては、必ず最新の情報を確認し、専門家へご相談ください。

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